その日、自分は大学時代の友人Tと街コンに参加していた。
場所は、埼玉の大宮南銀座。
大宮駅のすぐ近いあるこの地域は、
有名は飲屋街でキャバクラが多数ある色街でもある。
この日、街コンで出会った女性に声を掛け、2次会に繰り出したものの、相手は終始テンションが低く、
こちら問いかけにもリアクションが薄い。
(何で誘いにのったのだろうか?)
終始盛り上がりに欠けた2次会を終えた。
何となくこのまま消化不良で終えるのも何だが、これと言って手だてもない。
とりあえずTと互いの近況について話でもしようと、近くのBARに入った。
ロシア人をナンパした体験談
何となく入ったそのBARはロマンチックな薄暗さというより、
ホラーの世界を連想させる不気味な雰囲気で、
BGMも暗いクラシックの曲が流れいる店であった。
(大宮にもこんなところがあったのか?)
とりあえず、ウイスキーの水割りを頼み、少しづつ口に運ぶ。
互いに35歳にも関わらず何の収穫もない。
仕事の愚痴や職場によくいる
- “悲劇のヒロイン気取りの女”
- “私、頑張ってますアピールをする女”
- “正論を履き違えた融通の利かない女”
の話などで盛り上がった。
まあ、こんな話をしているから女ができないであろう。
自分はそんな男前でもないが、Tは見た目は実に男前である。
しかし、どうも卑屈で、自分を卑下する傾向があり、負のオーラを漂わせている。
そのためか、これまで何度も合コン、街コンで敗北している。
そんなダメダメの2人に遠くの席から、
1人の美しい外国人女性がこちらに微笑み掛けているのに気が付いた。
いや、正確に言うと、Tと話しているときも何度もこちらに視線を向けていた。
Tは気づいていないようだが、自分はさっきからその女性と目が合っていた。
(チャンスかもしれない。)
ロシア人女性をナンパして口説いてみた
何となくその女性に向けて“一緒に飲む?”的なジェスチャーをしたら、
その美しい外国人女性が自分たちに近寄ってきた。
外国人美女「コンニチワ。Can you drink with me ?」
(・・・ナンパ成功か?)
女性はそう言って自分らの席に座った。見れば見るほど綺麗な人だ。
暗がかった店の中でも分かるくらい
- 白い肌
- キュートな小顔
- ストレートに伸びた金髪
- 青い瞳
- 高い鼻先
少し微笑む姿は“小悪魔”、“魔性の女”という言葉ピッタリ当てはまる。
まさかの展開に動揺する二人だが、すっかり酒も入っていたので、
「OK!No problem. Nice to meet you.」
おいおい、大丈夫か?頼りは自分の拙い旅行英語だ。
しかし、今日はおそらくこれでラストチャンスとなるだろう。
この好機を逃すわけにはいかない。
街コン目的で大宮に来たが、もはやナンパでも構わない。
日本の文化に詳しい美人ロシア人
ナンパした彼女の名はナターシャ(仮名)、
出身はロシアのウラジオストクというところだ。
日本から比較的近い。
年齢を聞くは失礼なので聞かなかったが、
見た目、肌や髪のつや具合からして20代前半と言ったところだろうか?
大学では英文科に在籍していたが、
日本のアニメに興味を持ったことをきっかけに日本文化を学びたいと語学留学しているとのこと。
大宮近くの日本人の家庭にホームステイして半年ほど経つらしい。
ロシアでも日本語を独学で勉強し、
日本で本格的に語学を勉強している様子で、日本語はある程度話せる。
ところどころ詰まる部分は英語で補った。
アニメが好きということもあり、まずはアニメの話から会話を切り出してみた。
自分「日本のアニメで何が好きなの?」
ナターシャ「ナルト、ワンピースガスキデス。ロシアデモテレビデヤッテマス。トテモオモ シロイデス。」
ナターシャ「ワタシ、ニホンノアニメタクサンミマシタ。トテモクワシイデス。」
大した自信だ。
確かに海外で日本のアニメが多く放映されているのは知っている。
海外旅行好きの自分は、あっちでテレビを見た際、現地語の吹替え版の日本アニメを良く目にした。
しかし、日本人相手にアニメが詳しいなどと言う。
ではどこまで詳しいか確かめてみようと思った。
自分「ドラゴンボールやスラムダンク知ってる?」
T「ドラえもん、クレヨンしんちゃんは?」
立て続けに鉄板アニメを並べてみた。
しかし、
ナターシャ「???、、、ワカリマセーン。ミタコトナイデス。」
何だと!?
日本アニメに詳しいはずでは?ならこれならどうだ!
自分「サザエさん、セーラームーンはどう?」
ナターシャ「???、、、ワリマセーン。ドンナアニメデスカ?」
おいおいおい!詳しいんじゃないのか?
これじゃあまり会話にならないな。
仕方なく、最初知っていると言ったワンピースについて話を振ってみた。
自分「ワンピースのキャラクターで誰が一番好き?」
ナターシャ「(笑顔)」
なぜ笑う?なぜ黙る?するとTが気を使った(と思われる)感じで
T「ナターシャ本当はぜんぜんアニメ詳しくないんじゃないの?あんまこっちに合わせる必要なないよ。」
するとムッとした感じで
ナターシャ「ソンナコトナイヨ!ロシアデニホンノアニメタクサンヤッテルヨ!」
だったら何かこっちの質問に答えてくれよ。アニメの話はもういい。
とりあえず話題を変えるために少し下世話な質問をしてみた。
魔性の女、本領発揮
自分「ナターシャ彼氏いるの?ナターシャかわいいからモテるでしょ?」
ナターシャ「ソンナコトナイヨ。ロシアデハツキアッテタヒトイタケド、ニホンデハイナイネ。サビシイネ。」
おおっ!
こんな美女に彼氏がいないとは、皆恐れ多くて近づけないだけだと思うが、、、
自分「じゃあ俺ナターシャの彼氏なる~♪」
調子付いた自分がさっそく切り込んでいった。
ナターシャ「ウソー!イインデスカ?ウレシイデス。」
と言って、自分の手を取り、ペナルティエリアに近づいてきた。
これはかなり脈ありだな。
その後も、互いの趣味や好みの話で盛り上がった。
アニメ以外にも、
- 日本のお寺や神社に興味がある
- 寿司も好き
- 以外にも納豆もOK
という。
互いの距離はどんどん近づいてきた感じがした。
(ていうかかなり近い!)
とっくにペナルティエリアを越え、ゴールに迫る距離であった。
すると、おもむろにナターシャが席を立ち、
ナターシャ「チョットトイレイッテキマス。チョットマッテテネ。」
と言って席を外した。
まさかの展開に
彼女が席を外した後も自分とTは終始テンションが上がっていた。
- もう1件店をはしごするか?
- カラオケにでも行くか?
- 彼女をきっかけに合コンでも組んでもらおうか?
- この後どうやって彼女を口説いていこうか?
様々な想像が頭を巡っていた。
しかし、待てど待てどと彼女は戻ってこない。
(どういうことだ?)
おかしいと思ってキョロキョロし始めた二人に対し、無感情の店員がスッとやってきて、
店員「お客様、先程の方ならもう帰られましたよ。あと、お会計もこちらでお支払い頂けるということになっているのですが、いかがいたしましょうか?」
(ヤラれたっ!レシートを見てみるとしっかり彼女の分が含まれていた。)
しかもかなり注文していたようで、自分たちの倍になるではないだろうか量を飲んでいた。
当然金額はかなりの高額となっていた。
自分たちと飲んでいるときはかわいくサワー系を飲んでいたが、ウォッカを大分飲んでいたようだ。
Tは怒り心頭であったが、自分は何故か満足感でいっぱいであった。
これはナンパ失敗ということになるのだろうか?
いやっ、あれだけの美女と一緒に飲めたんだ。キャバクラに行ったと思えば良いか。
大宮のキャバクラには何度か行ったが、
あれ程の美女に当たったことはない。納得のいっていない様子のTは、
T「俺はこのままじゃ帰れない。もう1回誰かナンパしようぜ。」
もうやめておけよ。と思う自分とは違い、
Tは近くにいた女性2組に声を掛けナンパを試みたが、
当然うまくいかず冷たい態度を取られ、まったく相手にされなかった。
これ以上醜態をさらす前に今日は帰ろう。Tを説得しこの日は帰宅した。